• ドイツでは沐浴もお風呂も毎日入れない

    ドイツで2度の出産を経て,カルチャーショックだったことの1つは,「臍の緒が取れるまではそのままにしておく」です。沐浴もしなければ産湯にも入れません。 この新生児を沐浴しない方法は日本では「ドライテクニック」と呼ばれ,風呂文化ではない欧米で主流の様ですが,近年は日本でも取り入れられている病院もあるようです。 日本の風呂文化で育った我々夫婦にとっては「清潔じゃない!」と多大な抵抗が当初ありましたが,乳児を毎日風呂に入れないことに慣れてみると,結構いいものでした。子育てをしていて時間がなくてバタバタな夜,お風呂に入れることに対してストレスを感じず「まぁ,お風呂に入れなくて寝ちゃったけど,まぁいいっか」という余裕が心に生まれました。特にワンオペの日とか。お風呂に毎日入れなくては!!という呪縛から解放されるだけで,だいぶリラックスできます。 ドライテクニックとは? 新生児をすぐに産湯に入れず,代わりに乾いた布で拭くか,何もしないでそのままにしておくケア方法です。WHOが推奨している指針1では,「出産後,新生児を拭て清潔にし,産湯に入れるのは少なくとも産後24時間は待つ」となっています。私の子供たちは本当に軽〜く乾いた布で体についている血とかを拭かれた程度で,生後すぐの時間を過ごしました。産んだ直後,まだ臍の緒で繋がった状態で抱き上げた我が子は胎脂でベタベタでした。かなり野生動物的で結構びっくりこの方法ですが,特に,出生直後の敏感な時期に新生児の肌を守り,様々な利点を提供することが知られてます。 産後直後のカンガルーケア。産湯には入れずに,胎脂が付いた状態のまま臍の緒が取れるまで過ごしました。最初は白くベタベタしていますが,シーツやガーゼなどで自然とある程度取れていきました。 ドライテクニックの長所 ドライテクニックの短所 【こぼれ話】 臍の緒がついに取れ,ようやく最初の沐浴ができました。沐浴すれば,毛髪に絡みついた血の塊も取れ,ツルツルピカピカの赤ちゃんになるはず!!そう期待していたものの,2週間のお風呂を我慢した結果,我が子は,爬虫類が脱皮をするように全身の皮が剥け出しました。結局,全部剥け切るまでツルツルピカピカの赤ちゃんはお預けとなりました。初の沐浴の翌日にニューボーンフォトの撮影を予約していた私たち。脱皮状態が写るのではないかとヒヤヒヤしたのも,またいい思い出です。 臍の緒が取れた後も週1程度しか沐浴しない ドイツで乳幼児を頻繁にお風呂に入れないのは,風呂文化ではない+水の質が理由です。ドイツの水は日本の様な軟水ではなく,硬水です。硬水がもたらす肌への影響も影響しています。 硬水と肌への影響 ドイツの多くの地域では,水の硬度が高い(つまり,カルシウムやマグネシウムなどのミネラル分が豊富)です。硬水は皮膚にいくつかの影響を与えることが知られています: 頻繁な入浴の避け方 ドイツでは,これらの理由から,乳幼児を毎日のようにお風呂に入れるのではなく,数日〜1週間に1度の入浴に留めることが一般的です。これには次のような利点があります: 文化的な慣習と育児 また,ドイツの育児慣習では,乳幼児の自然な発達を尊重し,過干渉を避ける傾向があります。この文化的な観点からも,無理に毎日の入浴を行わない選択がされることがあります。 このようにドイツで乳幼児を頻繁にお風呂に入れない理由は,硬水の特性と肌への影響,さらには文化的な育児のアプローチに基づいています。これにより,乳幼児の肌を健やかに保つための慣習が形成されているのです。 皮膚の乾燥の観点から日本でも毎日入浴しなくてもいいのでは? 議論を起こしそうな問題提起ですが,毎年冬に東京へ一時帰国すると,家族全員乾燥に悩まされます。私は必ずお腹周りと頭皮が痒くなってしまうのと,手の甲に乾燥性湿疹が出てしまいます。シャンプー,ボディーソープとも,赤ちゃんにも使えることを謳っている洗浄力が弱く保湿効果があるものを使っています。それでも毎回乾燥性湿疹や痒みに悩まされるのは,日本の軟水とお風呂文化が影響しているのではないかと推測しています。 おわりに お風呂文化の国,日本で生まれ育った私たち夫婦はドイツで子育てをし,「毎日お風呂に入れないといけない!」という呪縛から解放されました。毎日入れなくても大丈夫と思うだけで,育児ストレスが軽減しました。ワンオペの日や,遅くなってしまった夜,「もういいや!」と1日2日お風呂をパスしても病気になるわけじゃないし大丈夫。頑張りすぎずに子育てしていきましょう!

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  • 出産後の腹部マッサージ – 体のケア・ボンディングに効果

    ドイツでは,出産後の病院滞在期間が約3日と短いため,日本のように病院で授乳や沐浴指導を受けることが一般的ではありません。代わりに,ほぼ毎日「ヘバメ」と呼ばれる訪問助産師が自宅に来て,赤ちゃんとの適切な接し方やママのケア方法を教えてくれます。この記事では,私たち夫婦がヘバメから教わった産後の腹部マッサージをシェアします。 産後の腹部マッサージの目的 私がヘバメから教わった産後の腹部マッサージは,ただのマッサージではありません。このマッサージは,腹部の臓器の位置を正しい位置に戻し,悪露の排出を助けるほか,赤ちゃんが生まれた後で形が変わってしまったお腹を,ママ自身がポジティブな気持ちで受け入れるために役立ちます。気持ちの良いマッサージを受けることで急激なホルモン変化によって不安定になりがちな精神面の安定にも役立ちます。さらに,パートナーがママの体をいたわるための手段としても,また二人のボンディングを強化するためにもなります。 パートナーとの関係にも良い影響を 産後の生活は赤ちゃん中心となりがちで、ママは赤ちゃんを抱っこしたり授乳したりすることでオキシトシンが分泌されますが,パートナーとの時間は自然と減少してしまいます。このマッサージは,パートナーとの距離を縮めます。私自身,産後赤ちゃん以外に対してはガルガル状態になることが幾度のなくありましたが,このマッサージを受けていると心穏やかになり,ガルガル状態の軽減にも役立ちました。 自分自身への意識を向ける機会 出産後、どれだけ大きなダメージを負っていようが待った無しの育児に追われる中、自分の身体を労わる時間はなかなか持ちにくいものです。腹部マッサージは、ママ自身が自分の体に意識を向けるいい機会となり、出産で変化した体に対してポジティブに受け入れることを促します。このマッサージは妊娠中子宮に圧迫され,本来の位置からずれていた腹部の臓器を妊娠前の体の状態に戻してあげることと,悪露の排出にもととも効果的です。 マッサージの方法 「産後の腹部マッサージ」についての具体的な方法は、以下のスライドで詳しく説明しています。 それぞれの動きの目安は30秒から1分くらい。 ②の「太陽と月」の動きが中心になります。①→②→③→②→④→②→⑤→②→⑥→②→⑦と他の動きを行った後に②に戻ることをおすすめします。 このようなマッサージを取り入れることで、産後の回復をサポートし、家族全体の幸せと健康を促進することができます。出産後のケアが如何に大切か、そして家族全員でサポートし合うことの重要性を、改めて感じ取っていただけたら幸いです。

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  • ピル服用で卵子温存への道 − 避妊から妊娠へ

    ピルには避妊手段としてから,更年期障害の症状緩和や卵の温存まで,様々な使い方が存在します。しかし,日本ではまだピル服用がそこまで普及していなかったり,「ピル=太る」などの噂が出回っていたり,ピルの種類も多いのでどれを選ぶべきか迷ってしまう方々がいるかもしれません。本記事がそうした方々の悩みを解決し,適切な選択を支援する一助となることを願っています。 きっかけ:ピル服用と避妊 学生の頃,恋人との愛情表現としてセックスをすることには賛成派でした。それでも,セックスの際の避妊方法としてコンドームを使うことになると,ちょっとした緊張感が常に伴っていました。特に次の生理がくるまで毎回ドキドキ… ピルを飲み出したのはちゃんと避妊できたか不安になることが嫌だったから。それが私が最初に避妊のためにピルを選んだきっかけです。私の体を自分自身でコントロールできるようになり,精神的に楽になりました。 もちろんピルだけでは性感染症を防ぐことはできないので,セックスの際にはコンドームとピルを併用し,自分の体を守りました。今日は避妊目的のピル服用から,将来の妊娠を考えたピル服用へと変わった私の経緯についてお話しします。 卵子のライフサイクル: 月間排卵と生理 女性は卵巣に原始卵胞を蓄えて生まれてきます。これらは生まれた時点で約200万個ありますが,初経時には約30万個まで数を減らします (1)。この原始卵胞を成熟させた後に卵(卵子)として放出します。これが排卵です。排卵された卵が受精・着床すれば妊娠,受精しなければ生理が来る,というのが基本的な仕組みです。しかし,すべての原始卵胞が成熟卵胞まで成熟するわけではありません。なんと99%以上の卵胞は成熟の過程でアポトーシス(プログラム細胞死)を経て消滅してしまいます。 仮に30歳で第一子妊娠できたとすると,30歳までに180回生理を経験することになります。生涯で原始卵胞から成熟卵胞にまで成熟するのはわずか数百個と言われているのに,妊娠したいと思う年齢に達した頃にはすでに200個近くも無駄にしていると思うと恐ろしくなりました。 1)浅田,日産婦医会報(平成24年6月号) ピル服用による卵子温存 25歳の時,私は今度は将来的に妊娠をするためにピルを飲み始めました。卵胞の無駄な消費を止め,卵の数を温存するためです。 私がこの決断をした背景には,当時父が産婦人科医の方々との交流から卵温存のためのピル服用についての情報をくれたことと,友達との格差に焦っていたことです。当時の私は大学院在学中で博士課程への進学を決めたところで,いつ社会に出られるのか,いつ結婚するのか,なんて想像の先のまた先でした。 一方,中高時代の友達は,みんな就職して,毎月お給料を手にし,SNSにはちょっとリッチな海外旅行の写真や素敵なレストランで食事をした時の写真ばかりがアップされる。友達とご飯を食べる時,友達は職場からタクシーで来て,ヒールを履き,いわゆるバリキャリ的なOLファッション。対して,自分はというと足元は基本フラットシューズ,Tシャツにジーンズ姿。普段の飲み会はもっぱら研究室で。コンビニでお酒やつまみを調達することばかりでしたし,行っても高架下にある雑多な飲み屋でした(居心地がよくて大好きですが)。土日も研究室にいることが当たり前。周りの同級生と比べて私だけ人生が遅れている気がして,漠然と不安に襲われていたことが一番の動機になりました。 生物学的に考え,卵を排卵させるために成熟させること,また99%以上の卵胞をアポトーシスさせるには,それなりのエネルギーが必要なはず。子宮内膜も受精卵を迎え入れるべく毎月厚く変化させる必要がある。さらには子宮内膜を毎月厚くさせて,剥がれ落ちさせるエネルギーも。これはもったいないなと思いました。 それに子宮内膜が生理の際にきちんと排出されずにどっかに癒着して子宮内膜症を発症させるリスクも毎月払っていると考えると,ピルを飲まない手はありませんでした。 後に妊娠を望んですぐに妊娠をできたことも考慮し(もちろん複合的にラッキーが重なったわけですが),25歳の私はいい決断をしたなと思います。 ピルの種類と副効用 初めは体内のホルモンリズムに近づいという理由で三相性ピルのトリキュラー28を服用していましたが,一相性ピルのマーベロン28に変更しました。一相性ピルは出血日の調整がしやすいこと,ニキビがほとんどできなくなること,出血量の減少,PMSの緩和などのメリットがあります。ピル服用と体重増加に因果関係がないことも科学的に示されていますし,私がピル服用で太ることもありませんでした。 私自身,ピルを服用することで得られた副効用は大きかったと感じています。避妊,PMS治療,子宮内膜症治療,ニキビ治療,そして将来の妊娠を考えるための卵子温存。これらすべてがピル服用の目的であり,もっと多くの女性に避妊だけが目的のピル服用から,女性の生涯を通じたピル服用へと視野を広げる時代になってほしいです。 おわりに 私の体験はあくまで一例であり,全ての人が同じ結果を得るわけではありません。ピルに関する情報を正しく理解し,自身のライフスタイルや身体的な条件に最も合った選択をすることで,より豊かで健康的な生活を送ることが可能です。この記事がその一助となれば幸いです。

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Mamamarie

ドイツ在住。二児のママ。

大学院卒業後,ポスドクとしてドイツで働く。リケジョ。

このブログでは海外での出産・育児や日常生活をシェア。海外生活で色々とカルチャーショックに直面しつつも,リラックスした子育てライフを発信していきます。